YouTubeチャンネル運営代行と収益分配

収益分配型のチャンネル運営は共同事業に近く、決めることが格段に増えます。心臓部は、収益・口座・経費・分配を1つの計算式にすることです。

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「共同運営」と書いただけで民法上の組合と評価されると、赤字や第三者への支払で互いに重い責任を負うと解釈されるおそれがあります。

このページの要点

  • 組合に当たらず、それぞれ独立した事業者として役割と収益を分担することを明記する。
  • 対象収益を列挙して定義し、口座への集約、締日と支払日、分配の計算式と赤字の月の扱いを条文に書く。
  • チャンネル・アカウント・顧客リストの名義、成果物の権利、演者の肖像の利用、チャンネル名の商標を決める。
  • 収益化を定義し、収益化前の解約の制限、終了後の収益と過去の動画の扱いを決める。

結論:「収益の定義×入金口座×経費×分配の式」を1つの式にする

YouTubeなどのチャンネルの運営代行には、月額の固定報酬で編集・投稿を受ける形と、チャンネルの立ち上げから運営まで支援し、収益を分け合う形があります。前者は動画編集の業務委託契約の延長で扱えますが(動画編集の業務委託契約書のページ)、後者は、支援する側(企画・撮影・編集・運営・集客)と演者の側(出演・発信・顧客対応)の共同事業に近く、契約で決めることが格段に増えます。

事務所が作成した収益分配型の契約の心臓部は、「何を収益とするか」「どの口座に入れるか」「経費を誰がどこまで負担するか」「分配をどう計算するか」を、1つの整合した計算式に落とすことでした。あわせて、共同事業という言葉が民法上の組合と評価されないよう、組合に当たらないことを明記します。民法の組合契約は、各当事者が出資をして共同の事業を営むことを約することによって効力を生じ、出資は労務でもよいとされています(民法667条)。組合と評価されると、赤字や第三者への支払について当事者が互いに重い責任を負うと解釈されるおそれがあるからです。

  1. 収益の定義・入金の口座・経費の負担・分配の式を、条文の中で1つの式にする。
  2. 組合に当たらず、それぞれ独立した事業者として役割と収益を分担することを明記する。
  3. チャンネル・アカウント・顧客リストの名義、動画の著作権、演者の肖像の利用、チャンネル名の商標を決める。
  4. 収益化前の中途解約、契約終了後の動画と収益(いわゆるテール収益)の扱いを決める。

役割の分担と、公開の最終決定権

YouTubeチャンネルの支援と収益分配の業務提携契約では、支援する側が企画・制作・運営・集客・管理を、演者の側が出演・発信・顧客対応を担い、生まれた収益を分け合う「収益分配型の業務提携」と位置づけ、法律上の組合には当たらないことを明記しました。

役割の分担(業務提携契約での列挙)

当事者業務
支援する側チャンネルの企画立案・台本の制作・サムネイルの制作・動画の編集・投稿・仮説の検証、チャンネルと各種アカウントの開設・運営・管理・維持、商品の販売・決済システムの整備と運営、広告宣伝と集客、対象収益の集約・経費の精算・帳簿の作成・分配額の算定と支払、免責表示と表現の管理
演者の側収録への出演、ライブ配信その他の発信、商品に関する顧客対応・顧客サポートの一次対応

稼働の目安として、収録への出演とライブ配信の月あたりの回数を定め(状況に応じて協議で変更可)、未達のときは書面又は電磁的方法で是正を求め、演者の側は正当な理由がない限り速やかに是正する、としました。減額ではなく是正を求める形で、是正の求めは解除を妨げません。病気や事故などで長く出演できない場合は誠実に協議します。チャンネルで公開するコンテンツの公開の可否は、演者の側が最終的に決めます。支援する側が企画・編集・投稿を担っても、演者が出たくない動画は出さない、という線引きです。

チャンネルの名称・ロゴ・ブランドは、演者の実名や肖像に依存しない独立のブランドとして構築し、呼称(愛称)を用います。チャンネルと各種アカウント(Googleアカウント、各種SNS、LINE公式アカウント、決済・販売システム)の名義と管理の権限は支援する側にあり、支援する側は善良な管理者の注意をもって運営・管理し、収益化の状態の維持に努めます。契約終了の時の引継ぎは、ヒヤリングの回答どおり協議としました。

対象収益の定義とお金の流れ

分配の対象となる収益の範囲は、分配額に直結する最も重要な確認事項です。ヒヤリングでは、対象をチャンネル経由の商品・サービスの売上に限る方向の回答でしたが、後日の食い違いを防ぐため、契約書では包括的に定義し、限定を希望するなら調整する、と説明書面で確認を求めました。

事務所の改訂例 対象収益の範囲

対象収益

ヒヤリングでの回答(要旨)チャンネル経由で販売する商品・サービスの売上に限る。
改訂後対象収益を「本事業に起因して取得する一切の収益」とし、(1)チャンネルを通じて販売する講座・オンラインサロン・有料コミュニティ・教材・セミナーなどの売上、(2)YouTubeの広告収益、(3)メンバーシップ・スーパーチャットその他の投げ銭、(4)企業案件・タイアップ・スポンサー、(5)アフィリエイト、(6)これらに準ずるチャンネル・アカウント経由の収益、と列挙しました。演者が契約前から単独で持つ事業の売上と、本事業に起因しない独自の事業の収益は除きます。

理由回答どおり「商品・サービスの売上のみ」に限ることもできますが、広告収益や企業案件が後から生まれたときに、分配の対象かどうかで揉めないようにするためです。

お金の流れは、すべての収益をいったん支援する側の名義の口座・アカウントに集約し、毎月末日で締めて、翌月10日(休業日なら直前の営業日)までに演者の側へ分配額を振り込む、振込の手数料は支援する側の負担、としました。対象収益は消費税込みの金額で算定し、各自の消費税その他の納税の義務はそれぞれが履行し、演者の側は支援する側の求めに応じて適格請求書その他必要な書類を交付します。各自の租税公課・社会保険料も各自が処理します。これも、組合ではないことの裏付けの一つになります。

配信者のマーケティング支援と収益分配の業務提携契約(個人用・法人用の2版)では、「収益」を、広告の掲載料、動画・配信の投げ銭・ギフティング、タイアップ・スポンサーの対価、ファンの課金収入、その他インターネット上の営利活動からの対価の総称と定義し、「契約媒体」を、支援する側が開設又は管理・運営するSNS・動画チャンネル・ライブ配信アプリと、そのコンテンツ・アナリティクス・収益管理の機能まで含めて定義しました。配分の比率は税引前・経費控除前の総収益を基準とした固定比率で、演者の出演・労務が主要な価値と判断される案件は個別に協議で調整できる、としています。毎月末締め・翌月15日払いで、支援する側は翌月10日までに、媒体別の収益明細・案件の一覧・計算式・支払済みの金額を含む月次の報告書を送り、演者は受領後10日以内に書面で異議を出せ、出さなければ承認とみなします。

分配の計算式、経費、赤字の月

条文例業務提携契約 第◯条(分配)

1支援側は、毎月末日を締日として、当月の対象収益(消費税込み)を集計する。

2演者側の当月の分配額は、次の式により算定する。演者側の分配額=当月の対象収益×演者側の分配比率-当月の折半対象経費×1/2

3支援側は、対象収益から前項の分配額を控除した残額を取得する。顧客対応スタッフの人件費(演者側の負担)及び支援側が負担する費用は、前項の計算に含めず、各自が支弁する。

4前項までの計算の結果が負の値となる場合その他算定に疑義がある場合は、甲乙協議のうえ定める。

計算式を条文に明記すると、毎月の分配で揉めにくくなります。第4項は、赤字の月の扱いを空白にしないための項です。

経費の区分

経費負担
外注費(動画の編集費・スライドの作成費その他制作に係る外注費)折半。演者の側が一定額以上の折半対象経費を支出するときは事前に通知して承認を得る。承認のない支出は折半の対象に含めない
顧客対応スタッフの人件費演者の側
AIツールの利用料、撮影機材・撮影器具、スタジオ、広告宣伝費、システムの利用料支援する側

経費は、分配に先立って精算します。

分配の比率の変動は、依頼者の要望を受けて書き方を変えました。ヒヤリングでは、事業の拡大に応じて比率を変えたいという希望があり、当初の説明書面では、月商が一定額を超えた場合に支援する側の裁量で一定の範囲内で比率を引き上げる設計とし、上限を全く設けないと条項自体が無効と判断されるおそれがあるため、上限(=演者の側の下限)を置く前提で、金額・比率・事前通知の日数を確認事項にしました。依頼者との協議を踏まえた改訂版では、分配の比率は、利益が生じ始めた場合その他状況に変化が生じた場合に協議のうえ変更でき、締結前に「利益が生じ始めたときは比率を変動させること」について既に合意していることを確認する条を置き、変更は書面又は電磁的方法による双方の合意で効力を生じる、という軟らかい形にしました。最低保証の額は設けていません。

帳簿と報告の条も、計算式と組になります。支援する側は帳簿・証憑を作成して法令の期間保存し、毎月、対象収益と分配額の内容を記載した資料(売上の状況を確認できるスプレッドシートを含む)を開示します。演者の側は合理的な範囲で閲覧・監査を請求でき、支援する側は正当な理由がない限り応じます。分配額に争いが生じたときは、広告収益の管理画面・決済データその他の証憑を相互に共有して解決に協力します。

名義・顧客リスト・著作権・演者の肖像・商標

顧客リスト(顧客・見込み顧客・視聴者の氏名・連絡先などと、その名簿・データベース)の所有権と管理権は支援する側とし、支援する側が個人情報の取得の主体となって、利用目的の通知・公表などの手続を行います。個人データを第三者に提供するには原則として本人の同意が要るので(個人情報保護法27条1項)、誰が取得の主体かを最初に決めておかないと、終了の時にリストを移せないことがあります。終了の時の顧客リストの交付・返還・削除の要否と、演者の側が自分の別の事業に顧客リストを使う場合の可否・条件は協議としました。

成果物の権利の分け方(業務提携契約)

成果物期間中終了後
支援する側が制作した企画・台本・サムネイル・スライド・編集済みの動画支援する側双方が非独占的に自己の事業に利用できる。支援する側は既存の動画をチャンネルに残して収益化を続けられる
共同で創作し寄与を分離できない成果物(講座など)共有・持分各2分の1。相手の同意なく単独で第三者に利用させたり処分したりしない。本事業のための利用は相互に許諾したものとみなす双方が非独占的に利用できる。相手方の利用に人格権を行使しない
演者の氏名(呼称を含む)・肖像・音声・経歴事業の目的の範囲でチャンネルと商品の制作・運営・宣伝・広告への利用を許諾(地域は全世界)協議。ただし終了前に公開済みの動画は残置・継続して収益化でき、そのために必要な範囲で許諾は存続

演者の側には、出演・経歴・発信内容に虚偽がないこと、第三者の著作権・肖像権・パブリシティ権を侵害しないこと、演者の出演について必要な権限と同意を有することを表明保証してもらいます。チャンネル名(呼称)の商標については、ヒヤリングの回答では登録の名義は演者でしたが、チャンネルの名義は支援する側なので、このままだと契約終了後にブランドの使用をめぐって双方が動けなくなるおそれがある、と説明しました。そこで商標の出願・登録の名義と費用は別に協議とし、期間中は支援する側が無償で使用できる許諾を置き、演者の名義で固定する希望があれば修正する、としています。

配信者の支援契約では、演者が契約の時点で持っているSNS・動画配信のアカウントについて、支援する側が業務に必要な範囲で管理の権限(ログイン情報・投稿の編集・収益の管理・分析データの操作の権限を含む)の付与を受け、権限の付与で名義上の所有権は移転しない、ただし支援する側が新たに開設した媒体は支援する側が所有・管理する、と定めました。終了の時に演者が管理の権限の返還を申し出たら、支援する側はログイン情報などを速やかに引き渡しますが、支援する側が制作・投稿したコンテンツは削除したうえで返還する、としています。

BAN・炎上・第三者からの請求と、賠償の上限

リスクの分担(業務提携契約)

リスク原則例外
アカウントの停止・削除・凍結(BAN)、収益化の停止など支援する側が負担演者の言動・投稿内容、演者の側の法令違反その他演者の側の帰責事由による場合は協議
視聴者・顧客からの苦情・請求・訴訟支援する側が対応し責任を負う演者の故意・重大な過失、法令違反・虚偽表示・表現基準の違反に起因するときは演者の側が責任を負い、支援する側の損害(合理的な弁護士費用を含む)を補償
信用の毀損・炎上無催告解除の事由自己又は演者について、信用を著しく毀損する事由、重大な法令違反又は社会的信用を失墜させる事態(いわゆる炎上を含む)が生じ、事業の継続が著しく困難となったとき

演者の専門分野に関する規制業務は行わないこと、免責・注意喚起の表示の文言は支援する側が作成し、実績や利益の表示は景品表示法などに適合する基準を支援する側が整備し、演者はその基準を守ること、も定めました。専属の義務はなく、演者はチャンネル以外で同種の発信・競合する活動をしてよく、支援する側も他の演者・競合するチャンネルを支援できます。終了後の競業避止の義務はどちらも負いません(顧客リスト・知的財産・秘密保持の義務は残ります)。

賠償は、現実に発生した通常かつ直接の損害に限り、逸失利益・間接損害・特別損害を含まない(故意・重大な過失を除く)としたうえで、累計の総額は、損害が発生した月から遡る12か月間に損害を与えた当事者が受け取った分配額の総額を上限としました。収益分配型では「報酬額」がないので、上限の基準を分配額にしたものです。分配額・精算金の支払の義務そのもの、第三者からの請求の補償、秘密保持の義務の違反には上限を適用しません。

期間・収益化前の解約・終了後の収益

業務提携契約では、契約期間を1年とし、満了の3か月前までに不更新の通知がなければ1年ずつ更新する、としました。収益化に至っていない段階では一方的な解約・打ち切りはできないとし、「収益化に至った」とは、暦月の対象収益が当該月の経費の総額を上回る状態が継続的に生じた状態をいい、疑義があれば協議する、と定義しています。収益化の後は、一定期間前の通知と協議を経て将来に向かって解約でき、解約の時は既に発生した分配・精算と終了の時の措置を協議します。終了後の収益(既存の動画の広告収益などのテール収益)は支援する側が取得し、終了の時に、チャンネル・アカウントの帰属と引継ぎ、顧客リストの扱い、演者の肖像・音声の利用と過去の動画の残置を協議します。

収益分配型の契約の時間軸(業務提携契約の例)

  1. 立ち上げ支援する側がチャンネルとアカウントを開設。先行投資の段階。
  2. 収益化前一方的な解約・打ち切りはできない。
  3. 収益化暦月の対象収益が経費の総額を継続的に上回る状態。
  4. 収益化後一定期間前の通知と協議を経て、将来に向かって解約できる。
  5. 終了後テール収益は支援する側。過去の動画の残置と演者の肖像の利用は、公開済みの動画について許諾が存続。

配信者の支援契約では、支援する側の投資の回収を前提に、契約期間を5年、満了の6か月前までに解約の意思表示がなければ1年ずつ更新とし、期間中はやむを得ない事由がある場合を除き相手方の承諾なく解約できない、としました。終了後の競業の制限を置く一方で、「支援する側が投下した営業資源の償却が完了した旨を合理的に説明し、支援する側が承諾した場合」と「演者の芸能活動の継続が困難となり職業の継続のためやむを得ない場合」を例外とし、違約金についても、著しく過大と双方が判断する場合は協議で相当額に調整する定めを置いています。演者が未成年者の場合は、法定代理人の書面による同意を取得済みであることを表明保証してもらいます。

中途解約の精算は、受託側の書類のレビューでも問題になりました。SNS運用支援の規約は、顧客都合のキャンセル・中途解約の精算金を契約期間全体の料金総額×進行段階の料率とし、運用開始後は100%としていました。レビューでは、運用開始の翌日に解約しても残り全期間分を払わせることになること、運用・助言の部分は準委任で、委任者が受任者の利益をも目的とする委任を解除したときの損害賠償について、民法651条2項2号は「専ら報酬を得ることによるもの」を受任者の利益から除いていること、事業者どうしでも実損害と著しく均衡を欠く違約金は公序良俗(民法90条)に反するとして合理的な額を超える部分が無効とされ得ること、を指摘しました。収益分配型の契約でも、収益化前の解約の制限や違約金を置くときは、先行投資の内容から説明できる形にしておきます。

最後に、完全合意の条で、契約書が、締結前の口頭・書面の合意、覚書、LINEその他の電磁的方法によるやり取りに優先する、と明記しました。共同事業の立ち上げの段階は、チャットで条件をやり取りすることが多いためです。成果を保証しない条項の書き方は動画編集の業務委託契約書のページ、アカウントの事故を招く行為と責任の線引きはBGM・素材とAIのページでも触れています。演者の肖像の扱いの考え方は出演契約書のページもあわせて確認してください。

YouTubeの収益分配で起きがちなこと

よくあるご質問

YouTubeの収益分配の契約で一番大事なことは何ですか?

何を「収益」とするか、どの口座に入れるか、経費を誰がどこまで負担するか、を1つの計算式に落とすことです。式を条文に書き、赤字の月の扱いも決めておくと、毎月の分配で揉めにくくなります。

共同運営と書くと何か問題がありますか?

民法上の組合と評価されると、赤字や第三者への支払で互いに重い責任を負うと解釈されるおそれがあります。組合に当たらず、それぞれ独立した事業者である旨を明記し、税金や社会保険料も各自が処理すると書いておきます。

チャンネルの名義はどちらにすべきですか?

事業の実態と終了の時の扱いに合わせて決めます。名義を一方にするなら、契約終了の時の引継ぎ、過去の動画の扱い、終了後の収益の帰属、チャンネル名の商標の扱いを必ず書いておきます。

収益化前に解約されたら、かけた費用は回収できますか?

何も書いていなければ難しくなります。収益化の状態を定義したうえで、それまでの中途解約を制限する、又は解約の時の精算方法を決めておく方法があります。違約金を置くときは、先行投資の内容から説明できる額にしておきます。

再生回数や収益を保証しないと書くべきですか?

書くべきです。プラットフォームの仕様の変更・収益化の審査・自動判定は運営者の判断で、制作する側では左右できないことを明記します。

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