編集データ・ラッシュ・プロジェクトファイル

完成した動画のほかに、ラッシュ、プロジェクトファイル、使用素材が生まれます。「渡すもの」「保管するもの」「消すもの」を契約で分けておきます。

トップページ › 編集データ・ラッシュ・プロジェクトファイル
納品から半年後に「テロップを1文字直したいのでプロジェクトファイルをください」と言われたとき、渡す義務があるかは契約しだいです。

このページの要点

  • 受注者側は最終データの保管期間を区切り、プロジェクトファイルや素材データは保存・引渡しの対象外と書く。
  • 委託者側は、ラッシュは撮影担当者が毎回納品、プロジェクトファイルは指定案件と一定期間内の依頼分を引き渡す。
  • 保管期間は削除の義務ではない。満了30日前に引取りを確認し、秘密保持契約の削除の指示が優先する旨を書く。
  • データ消失の免責は受注者の責めに帰することができない事由に限り、消費者向けでは故意・重大な過失を除くと明記する。

結論:「渡すもの」「保管するもの」「消すもの」を契約で分ける

動画の仕事では、完成した動画データのほかに、撮影した未編集の素材(ラッシュ)、編集ソフトのプロジェクトファイル(開くと再編集ができるデータ)、BGMや画像などの使用素材の一式が生まれます。発注者は「あとで自社で直したい」「別の編集者に引き継ぎたい」と考え、受注者は「プロジェクトファイルにはテンプレートやプリセット、エフェクトなどのノウハウが詰まっている」「いつまでも保管し続ける負担と責任は負いたくない」と考えます。

この利害のぶつかり合いは、事務所の書類では次の3つの形で出てきました。

  1. 引渡しの対象:完成データだけか、ラッシュやプロジェクトファイルも含むか。含むなら毎回か、指定した案件だけか、別料金か。
  2. 保管の期間:いつまで保管し、期間が過ぎたら消してよいか。消す前に引取りの意思を確認するか。
  3. 秘密保持との関係:発注者の秘密保持契約が「納品後速やかに削除」を求めていると、保管の約束とぶつかる。

受注者側の契約では「最終データだけを一定期間保管し、プロジェクトファイルや素材データは保存の対象外」、委託者側(制作会社・運営代行会社)の契約では「ラッシュは毎回・プロジェクトファイルは指定した案件・一定期間は保管」という形が見られます。どちらの立場で契約書を作るかで、条文の重心が変わります。

受注者側の契約:完成データだけを渡し、保管期間を区切る

地域のスポーツ教室から動画制作を受ける個人の基本契約(受注者側)では、最終データは納品日から1か月保存とし、編集用の元データ、プロジェクトファイル、素材データ、中間生成物は保存義務の対象外、期間後は通知なく削除でき、永続的な保存・バックアップ・復元の保証はしない、期間後の再提供はデータが残っている場合に限り有償、と定めました。保存期間中であっても、天災、機材の故障、記録媒体の劣化、クラウドサービスの障害など受注者の責めに帰することができない事由による滅失・毀損には責任を負わない、という項も置いています。

条文例基本契約 第◯条(データの保管)

1乙は、成果物の最終データを、納品日から1か月間保存する。編集用の元データ、プロジェクトファイル、素材データ及び中間生成物は、個別契約に定めがない限り、保存の対象としない。

2乙は、前項の期間の経過後、甲に通知することなく前項のデータを削除することができる。

3乙は、データの永続的な保存、バックアップ及び復元を保証しない。前項の期間の経過後にデータの再提供を求められたときは、データが現存する場合に限り、有償で応じる。

ヒヤリングで確かめること データの扱いを決めるとき(受注者側)

聞くこと

聞く理由

完成データのほかに、渡すことがあるデータはありますか(プロジェクトファイル、未編集の素材、サムネイルの元データなど)。

渡すなら、何を、いつまでに、どの条件で渡すかを個別契約で決め、料金も示しておきます。

データはどこに保管していますか(手元の機器、外付けの記録媒体、クラウドサービス)。

クラウドや記録媒体の障害による消失のうち、受注者の責めに帰することができないものを免責する範囲を決めるためです。

保管期間が過ぎた後に再提供を頼まれたら、受けますか。料金はどうしますか。

データが残っている場合に限り有償で応じる、と書いておくと、無償の再提供を当然視されにくくなります。

発注者の秘密保持契約にサインしていますか。削除の時期の定めはありますか。

基本契約の保管期間と矛盾していないかを確認します。

撮影した未編集の素材についても、書いておかないと争いの種になります。Instagramの運用支援と現地での撮影を受けるコンサル契約のレビュー(依頼者=受注者)では、レビュー対象の原案が、リール動画は完成版、フィード投稿は完成版の画像と発注者が編集できるデザインデータを引き渡す、と具体的に定めていた一方、未編集の撮影素材の帰属と引渡しの義務の有無が書かれていませんでした。受注者のノウハウを守る観点から、「本条に定める制作物のデータを除き、撮影により取得した未編集の素材データを引き渡す義務を負わない」旨の新設を勧めました。

委託者側の契約:ラッシュは毎回、プロジェクトファイルは指定案件

SNS運用代行会社が編集者・撮影担当などに外注する契約一式では、依頼者原案の秘密保持契約に「納品及び修正対応の完了後、乙は、甲から受領した素材及び本業務に関して作成した編集データを速やかに削除する」とありました。整備方針の提案書では、この条項だと後日の再編集ができなくなること、編集者の業務仕様書に、プロジェクトファイルと使用素材の納品の義務、納品形式の技術仕様(解像度、フレームレート、コーデック、尺、音量の基準)、納品後の保管の義務を置くべきことを指摘しました。

ヒヤリングで確かめること データの扱いを決めるとき(委託者側)

聞くこと

聞く理由

ラッシュ(未編集の撮影素材)は、毎回納品してもらいますか。

原則として毎回納品してもらう場合は、撮影担当者の業務仕様書に、全部を納品の都度アップロードする義務を置きます。

プロジェクトファイルは、どの案件で必要ですか。

案件によって必要性が変わる場合は、個別発注書で指定した案件に加え、納品後6か月以内に依頼した案件も引き渡す形にします。

ラッシュは誰が撮って、誰が納品しますか。

動画編集者はラッシュを撮影しないため、編集者の仕様書からラッシュの納品を外し、撮影担当者の仕様書で毎回納品とする整理にしました。

秘密保持契約で、早期の削除を求めることがありますか。

保管の定めと削除の指示のどちらが優先するかを決めておく必要があります。

改訂版では、成果物の定義に「編集用プロジェクトファイル(動画編集ソフトウェアが生成する編集履歴を含むデータファイルであって、これを開くことにより再編集が可能なもの)」を明記しました。依頼者から編集用プロジェクトファイルの意味について質問があり、Premiere Proなどの編集ソフトが生成する編集履歴を含むデータで、書き出した後の動画ファイルとは別のもの、後日のテロップの修正や別の尺への組み替えに必要なもの、と回答して、その内容を括弧書きにしたものです。指定のない案件も、納品後6か月間は、プロジェクトファイルと再編集に必要な未編集の素材・画像・音声を保管します。保管期間は依頼者の希望で1年間から6か月間に改めました。

ご質問と回答 保管期間が過ぎたら

6か月の保管期間が過ぎたら、削除しなければいけないのですか。

保管期間の定めであって、削除の義務ではありません。秘密保持契約に基づいて委託者が早期の削除を求めた場合は、委託者の指示が優先する旨を明記します。そのうえで、期間満了の30日前までに受託者が引取りの要否を確認し、委託者が14日以内に回答しないときは引取り不要として扱える、という手順を基本契約に加えました。

保管と削除の流れ(委託者側の改訂版)

  1. 納品完成データと、指定案件ではプロジェクトファイルを納品。ラッシュは撮影担当者が毎回納品。
  2. 保管納品後6か月間、プロジェクトファイルと再編集に必要な素材を保管。委託者は保管の状況の確認を求められる。
  3. 満了前の確認満了の30日前までに受託者が引取りの要否を確認。14日以内に回答がなければ引取り不要。
  4. 削除と報告満了後又は削除の指示があったときは、遅滞なく復元できない方法で削除し、完了を報告。

受託者が自分では削除できないクラウドの自動複製・バックアップは、削除が難しい理由と保存期間を報告し、利用・共有しないまま、サービス側で自動削除されるまで適切に管理します。受託者の判断で保管を続けることは、原則として認めない設計です。

条文例基本契約 第◯条(保管期間の満了と引取りの確認)

1乙は、前条に定める保管期間の満了の30日前までに、甲に対し、保管しているデータの引取りの要否を書面又は電磁的方法により確認する。

2甲が前項の確認を受けた日から14日以内に回答しないときは、乙は、甲が引取りを要しないものとして扱うことができる。

3甲が秘密保持契約その他の合意に基づき、保管期間の満了前にデータの削除を求めたときは、甲の指示が前条の定めに優先する。

保管は義務、削除は満了か指示で、という整理です。満了前の確認を受託者の側の手続にしておくと、委託者が引取りを忘れていた、という事態を減らせます。

事務所の書類に出てきた保管期間

立場・契約保管期間期間後の扱い
動画制作を受ける個人の基本契約(受注者)最終データを納品日から1か月通知なく削除できる。再提供はデータが現存する場合に限り有償
SNS運用代行会社の外注契約(委託者)納品後6か月(プロジェクトファイルと再編集用の素材)満了30日前に引取りを確認。削除は復元できない方法で行い、完了を報告
消費者向けウェディング撮影の規約納品完了日から30日を目安長期保存は保証しない。お客様が自分で保存する

期間の長短より、起算点(納品の時点)と、期間後に何が起きるかを書くことが大切です。

秘密保持との関係では、もう一つ整理しておくことがあります。委託者側の秘密保持契約では、依頼者の質問を受けて、受託者が以前から持っている汎用のひな形・テンプレート・一般的な知識や技能は秘密情報に含まれない(ただし、その中に含まれる委託者やクライアントの秘密情報は除く)という項を加えました。データの削除の義務がテンプレートや編集の技術にまで及ぶと読まれると、受託者はほかの仕事ができなくなるからです。削除の対象は、委託者から受け取った素材と、その案件のために作ったデータに限ると、範囲をはっきりさせておきます。

秘密保持の期間と、返還・廃棄の手順も、書類どうしでそろえておきます。公的団体が発注者となる映像制作の契約(受注者側)では、業務委託契約の秘密保持の義務を終了後3年間としつつ、別に結んだ秘密保持契約により厳格な定めがあるときはそちらを優先するとし、秘密保持契約では、開示を受けた日又は契約の終了日のいずれか遅い日から5年間としていました。同じ秘密保持契約では、返還又は廃棄の完了後に、方法を明記した廃棄報告書を出すこと、電子データはUSBメモリ・HDD・クラウドストレージからの完全な消去や初期化など復元できない方法で処理すること、返還も廃棄もできない情報が残るときは直ちに通知して協議すること、を定めています。期間が食い違う二つの書類のどちらが優先するかを書いておかないと、どちらの期間で義務が終わるのかが争いになります。

納品形式と、撮影だけを受けるときの納品物

撮影だけを受ける業務委託契約(編集は除外)では、成果物を「すべての動画ファイル、関連する映像データ、メタデータ、及び付随する構成ファイル」と広く定義し、ファイル名・フォルダ構成・解像度・容量を合理的な水準で整理して納品する義務を置いていました。撮影だけを受ける場合も、何をどの状態で渡すかを書いておかないと、検収で争いになります。

納品形式の書き方の例

項目書き方の例
ファイル形式MP4、MOV又は発注者が指定する形式
画質・技術仕様1920×1080以上。必要に応じてフレームレート、コーデック、尺、音量の基準
提出の方法USBメモリ、外部ストレージ又は承諾を得たクラウドストレージ
添付書類納品物のチェックリストと納品完了報告書(電子形式を含む)
整理の水準ファイル名・フォルダ構成・解像度・容量を合理的な水準で整理

公的団体が発注者となる映像制作の業務委託契約(受注者側)と、撮影のみの業務委託契約の定めから整理したものです。

発注者から貸与された資料の扱いも、データの条とあわせて決めます。サービス提供会社を通じて映像制作を受ける契約では、貸与・提供された資料は業務の目的の範囲でのみ使い、複写・複製・加工・転用・第三者への開示を禁止し、業務終了時又は求めがあったときは返却又は完全に破棄し、破棄した場合は証明する書面を出す(費用は特段の定めがない限り発注者の負担)、としました。

削除の運用が回るか、消費者向けの「納品」はいつか

映像制作会社のフリーランス向け契約(委託者側)のレビューでは、案件ごとに発注者の指示で削除する建付けについて、制作案件が次々と流れていく実態では1件ごとの削除の指示は現実に維持できず、受注者の端末とクラウドに過去の全案件の素材が残り続ける、と指摘しました。受注者が廃業したり、端末を売却したり、亡くなったりした場合に備え、削除の義務が相続人に引き継がれる旨も検討事項に挙げています。削除を「指示があったら」に頼るのではなく、期間と手順で自動的に進む形にするのが、上の委託者側の改訂版の考え方です。

同じレビューでは、データの管理の対象が「甲又は甲の関係者から提供された情報、素材及びデータ」に限られている点も指摘しました。受注者が撮影現場で撮った映像、編集の途中で書き出したデータ、クラウドの共有リンクは、文言の上では「提供された」ものではありません。業務で撮影したデータの帰属と私的な保存の禁止を明記し、共有リンクの転送は「複製」にも「保存」にも当たらないので、別に禁止しておく必要があります。貸与したアカウントやID・パスワードについても、アシスタントを含む第三者に使わせないこと、個別業務の終了時にアクセス権を返上させて削除を確認すること、を行為の規範として書いておくよう勧めました。撮影担当と編集担当が別の人である場合は、ラッシュを誰がいつどこへアップロードするかを撮影担当者の業務仕様書に書き、編集担当者には受け取った素材の保管と削除の義務を課す、と役割ごとに分けて書きます(職種ごとの書き分けはカメラマン・編集者に外注するときのページ、現場での私的な撮影の禁止は撮影現場のページ)。

人物が映る映像は、個人情報に当たり得ます(個人情報保護法2条1項)。発注者が個人データの取扱いを受注者に委託する場合、発注者は委託先に対して必要かつ適切な監督を行わなければなりません(同法25条)。保管と削除の手順を契約に書いておくことは、発注者の側から見ると、この監督の中身を決めることでもあります。

消費者向けのウェディング撮影の書類では、依頼者原案のデータ保管30日について、設定そのものは可能としつつ、「納品」の意味(リンクを送った時か、受け取った時か、再送した時か)が不明で起算点が争いになる、と指摘しました。完成版では、納品完了日から30日間を目安に保管し、保管は再ダウンロードの便宜のためで長期保存を保証しないこと、お客様は納品後速やかにご自身で保存・バックアップすること、期間経過後の消失・再提供不能には責任を負わないこと(故意・重大な過失を除く)を定めました。納品の時点の定義は修正回数と検収のページで扱っています。

プロジェクトファイルを渡すと、受注者のテンプレートやプリセットまで使い回されるのではないか、という不安もよく聞きます。受注者が以前から持っているテンプレート・プリセット・エフェクトは受注者に権利を残し、成果物を使うのに必要な範囲でだけ利用を認める条項を置きます。詳しくは動画制作の契約書と著作権のページで扱います。

編集データで起きがちなこと

よくあるご質問

プロジェクトファイルは発注者に渡さないといけませんか?

契約で決めていなければ、当然に渡す義務があるわけではありません。受注者側の契約では「プロジェクトファイルや素材データは保存・引渡しの対象外」とする例があり、委託者側では「指定した案件だけ引き渡す」とする例があります。渡すなら、範囲と条件と料金を個別契約で決めます。

動画のデータはいつまで保管すればいいですか?

事務所の書類では、1か月、30日、6か月の例がありました。期間後は削除できること、削除する前に引取りの意思を確認する手順(例:満了30日前に確認し、14日以内に回答がなければ引取り不要)を書いておくと揉めにくくなります。

秘密保持契約に「納品後すぐ削除」とあります。保管の約束とどちらが優先しますか?

書類どうしの優先関係を契約に書いておくべきです。事務所の書類では、秘密保持契約に基づいて委託者が削除を求めたときは、その指示が優先すると明記する形で整理しました。

撮影した未編集の素材は、誰のものですか?

契約に書かない限り争いの種になります。受注者側は「未編集の素材データは引き渡す義務を負わない」、委託者側は「ラッシュは成果物として毎回納品する」と、立場に応じて明記します。

データ消失の責任を一切負わないと書いてよいですか?

天災、機材の故障、クラウドサービスの障害など受注者の責めに帰することができない事由による消失に限って責任を負わない、とするのが事務所の書類の書き方です。消費者向けの撮影では、故意・重大な過失がある場合を除く旨も明記します。

あわせて読みたい、関連する別のガイド

あわせて読みたいページ

本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご質問と回答として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた動画編集・映像制作の業務委託契約書、撮影の業務委託契約書、出演者の業務仕様書と本人同意書、撮影現場の秘密保持誓約書、撮影サービスの利用規約・キャンセルポリシー・重要事項説明書、収益分配型の業務提携契約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。フリーランス法の運用は、公正取引委員会・厚生労働省のQ&A(令和8年8月26日時点)によります。参考: e-Gov法令検索 / フリーランス法Q&A(公正取引委員会) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 特定商取引法ガイド(消費者庁)

動画制作・撮影の契約書でお困りの方は、お気軽にご相談ください。

公式LINEで無料相談する
アトラス行政書士法人 公式LINEの友だち追加QRコード
  1. 公式LINEを友だち追加
  2. 「動画制作・撮影の契約書ガイドを見た」とメッセージを送信
  3. ご相談内容を確認し、LINEでご返信します(24時間・土日祝対応)

相談無料です。料金が発生するのは、お申込みいただいた書類の作成・点検だけです。

LINEで友だち追加して無料相談する

ご依頼・納品の流れを見る