このページの要点
- 映画製作者に参加を約束した著作者の著作権は映画製作者に帰属する(著作権法29条1項)。誰が映画製作者かを契約で明らかにする。
- 移転は報酬全額の支払完了を条件とし、第三者の著作物・提供素材・AI生成物の権利は権利者に残ると書く。
- 外注先にも同等の義務を課し、外注先に生じた著作権(27条・28条を含む)の譲渡と人格権の不行使を確保する。
- 成果物を実績として掲載する条件(公開後か、承諾制か、未公開のまま期間が過ぎたとき)を決めておく。
結論:動画では「誰に最初に著作権が生じるか」から確かめる
著作権を譲渡するか利用を許諾するか、譲渡のときに著作権法27条・28条の権利を特に書いておくこと、著作者人格権を行使しない約束を取ること。こうした一般的な論点は、Web制作やSNS運用の契約と共通です。このページでは、動画・撮影の契約に固有の次の4点に絞ります。
- 動画は「映画の著作物」になり得るため、著作権が最初から誰に生じるかが、映画製作者は誰かによって変わり得ること(著作権法29条1項)。
- 受注者側の契約では「報酬の全額の支払が完了した時に移転する」とし、その前の利用と支払が遅れたときの停止をどう書くか。
- 編集の一部や撮影を外注したとき、外注先に生じた権利を発注者までつなぐこと。
- ラッシュ、受注者のテンプレート、写真家の写真など、成果物以外の権利を誰に残すか。成果物を実績として掲載する条件もここに入ります。
なお、出演者の肖像権・パブリシティ権・実演家の権利は、成果物の著作権を譲り受けても移転しません。出演者の権利の処理は出演契約書のページと肖像権の同意書のページで扱います。
動画は「映画の著作物」になり得る
著作権法は、映画の効果に類似する視覚的又は視聴覚的効果を生じさせる方法で表現され、かつ、物に固定されている著作物を「映画の著作物」に含めています(著作権法2条3項)。映画の著作物の著作者は、制作、監督、演出、撮影、美術等を担当して、その映画の著作物の全体的形成に創作的に寄与した者です(同法16条)。そして、その著作者が「映画製作者」、つまり映画の著作物の製作に発意と責任を有する者(同法2条1項10号)に対して製作への参加を約束しているときは、著作権は映画製作者に帰属します(同法29条1項。法人等の職務著作に当たる場合などを除きます)。
つまり、契約書に「支払完了時に乙から甲へ移転する」と書いていても、そもそも著作権が最初に誰に生じているのかが、映画製作者は誰かによって変わり得る、ということです。
29条の考え方(映画製作者に参加を約束している場合)
職務著作(著作権法15条1項)に当たる場合は29条1項の対象から除かれます。
SNS運用支援(企画・撮影・編集・投稿)の申込書と規約のレビューでは、運用支援会社が著作権を取得し、料金の全額の支払が完了した時に顧客へ移転する、支払前は利用の許諾にとどめて未払いのときは停止できる、という構造の規約について、次のように指摘しました。
- 動画は映画の著作物に当たり得るので、映画製作者が誰かで帰属が決まる。
- 運用支援会社の従業員が作った動画でも、顧客のアカウント・名義で公表されるなら、職務著作の要件である「法人等が自己の著作の名義の下に公表するもの」(著作権法15条1項)を満たすかは明らかでない。外注した動画では、通常、職務著作は成立しない。
- 制作者が参加を約束した相手は通常は運用支援会社だが、顧客が企画を発意し費用を負担する構造なら、顧客が映画製作者だと主張される余地もある。
- 顧客に最初から帰属すると評価されると、「支払完了時の移転」も「未払時の停止」も前提を欠く。
改善の方向としては、運用支援会社が映画製作者(製作の責任を負い制作費を支出する主体)であることを契約に明記するか、著作権の帰属にかかわらず、未払いのときは投稿の削除・利用の停止を求められる契約上の権利として組み立て直すことを示しました。権利の帰属だけに頼らず、契約上の請求権として書いておけば、帰属の評価が揺れても未払いへの対抗手段が残ります。
受注者側の定番:報酬の全額の支払完了時に移転する
地域のスポーツ教室から動画制作を受ける個人の基本契約(受注者側)では、成果物の著作権(27条・28条の権利を含む)は、その個別契約の報酬全額の支払完了を停止条件として受注者から発注者へ譲渡され、支払が完了するまでは受注者に留保される、としました。譲渡の後は、発注者が期間・地域・媒体・利用の形態の制限なく利用・改変・再許諾できます。著作者人格権は行使しないとしつつ、成果物が受注者の名誉又は声望を著しく害する態様で利用される場合は除いています。成果物に第三者の著作物、発注者の提供素材、AI生成物など受注者に帰属しない権利が含まれるときは、その権利は権利者に残り、発注者はその利用条件に従って成果物を使う、という項も置きました。受注者が移転を約束できるのは、自分が持っている権利だけだからです(BGM・素材のページ)。
SNS運用代行会社の委託者側の基本契約でも、支払完了時の移転と移転前の利用許諾という構造を採り、移転前の利用許諾の範囲に「クライアントへの提供、SNSその他の媒体での公開及び広告への使用」を例示しました。成果物を基に委託者が作成し、又は委託者の指示で受託者が作成した改変物・編集物などの派生物の著作権も成果物と同様に扱う、と明記しています。
ただし、委託する側の会社がこの構造を採るときは、自社とクライアントとの契約との関係を確かめます。映像制作会社のフリーランス向け契約(委託者側)のレビューでは、外注先からの著作権の移転を報酬全額の支払を条件としつつ、制作会社はクライアントに納品した時点で著作権を譲渡し、外注先への支払はクライアントからの入金の後、という資金の流れになっている点を指摘しました。外注先に支払うまで制作会社は著作権を取得していないので、クライアントには持っていない権利を譲渡していることになり、支払をめぐる争いや外注先の破産の場面で問題になり得ます。移転前の利用の許諾の範囲に「甲がクライアントに対して負う義務の履行に必要な範囲」を含めるか、移転の時期を納品時とし、報酬が支払われないときの効果を別に定めるか、のどちらかで整合させるよう勧めました。
逆に、受注者に不利な定めの例もあります。ホテル向けの映像の制作と出演を一括で受ける法人の契約は、著作権(27条・28条を含む)が納品の時点で「対価の支払の有無にかかわらず」譲渡されるとし、受注者は同一・実質的に同一の構成のコンテンツを第三者に制作・提供しない(納品から3か月経過後で、内容・構成が著しく異なる類似のテーマは可)としていました。支払の有無にかかわらず移転する条項は、未払いのときの対抗手段(利用の停止)を失わせます。同種コンテンツの制作の制限は、期間と範囲が限られているかを確認するところです。
外注先の権利を発注者までつなぐ
著作物を創作する者が著作者になるので(著作権法2条1項2号)、編集の一部や撮影を外注すると、外注先が作った部分の著作権は外注先に生じます。外注先が個人のフリーランスであれば、通常、職務著作にもなりません。外注先から著作権を譲り受けるときに27条・28条の権利を特に書いておかないと、これらの権利は外注先に残ったものと推定されます(同法61条2項)。また、著作者人格権は譲渡の対象にならないので(同法59条)、外注先自身に行使しない約束をしてもらうことになります。
権利のバトン(外注がある場合)
真ん中のバトンが途切れると、受注者は発注者に約束した移転を果たせません。
契約の上では、外注先にも同じ水準の義務を負わせる条を置きます。先のスポーツ教室の基本契約(受注者側)では、受注者は自己の責任で再委託でき、発注者は個別の事前承諾を要しないことをあらかじめ承諾するとしたうえで、再委託先にも秘密保持・情報管理・個人情報保護・知的財産権の保護・反社会的勢力の排除について同等の義務を課して守らせ、再委託先の行為について受注者が自らの行為と同じ責任を負い、発注者は再委託先に直接請求せず受注者にだけ請求する、と定めました。映像制作会社の契約(委託者側)も、再委託には承諾を要し、承諾したときは同等の義務を負わせる形でした。外注先との契約の作り方はカメラマン・編集者に外注するときのページで扱います。
写真の場合は、外注先に著作権を残す形も取られます。撮影を受けた事業者がフォトグラファーに撮影とレタッチを再委託した案件では、写真の著作権(27条・28条を含む)はフォトグラファーに残し、受注事業者に独占的な利用を許諾し、使用する主体は最終発注者に限る、という構成にしました。最終発注者との写真の利用許諾契約では、著作権がフォトグラファーに最初から帰属することを確認し、受注事業者が許諾の権限を持つことを表明保証し、人格権を行使しない合意を取得済みであることも保証しました。利用許諾を受けた者は、許諾に係る利用方法及び条件の範囲内でだけ利用できます(著作権法63条2項)。当初の利用許諾契約では、無断利用・目的外の使用・第三者への提供があった場合の損害額を通常の利用料の3倍を下回らないものと推定し、損害には逸失利益・弁護士費用・調査費用・第三者対応の費用などを含める、と定めていました。この最終発注者向けの契約は、依頼者の希望により、定義・権利の所在・利用許諾・利用制限・データ管理・期間・違反時の措置に絞った簡潔な形に改め、違反時の措置も「利用の停止及びデータの削除を求めることができる」に絞りました。
反対に、事務所の資料にある撮影だけの業務委託契約では、成果物の著作権(27条・28条を含む)は納品の時に委託者へ譲渡され、委託者は期間・回数・地域の制限なく利用・編集・加工でき、関連会社や業務委託先へ再許諾できる、成果物に第三者の肖像・商標などが含まれるときは撮影者が権利処理をする、と定められていました。撮影を受ける側がこの書式に署名するなら、納品の時に権利がすべて移ること、写り込んだ第三者の権利処理まで自分が負うことを前提に、撮影の段階で写り込みを避ける運用と料金を考えておく必要があります(写り込みの扱いは動画撮影の契約書と撮影現場のページ)。
権利の対価と、実績としての掲載
委託する側がフリーランスに成果物の権利を譲渡させ、又は利用を許諾させるときは、権利の扱いを報酬と切り離して考えないようにします。公正取引委員会・厚生労働省のフリーランス法Q&Aは、成果物に関する権利の譲渡・許諾を受けたい場合は、業務委託の際に「給付の内容」の一部として譲渡・許諾の範囲を明確に記載し、その対価を報酬に加える必要があるとし、権利の対価について協議しないまま一方的に通常支払われる対価より低い額を定めると買いたたきとして、権利がフリーランスにあるのに対価を支払わずに成果物を二次利用することなどで利益を不当に害すると不当な経済上の利益の提供要請として、問題となるおそれがある、としています(Q&A問81)。撮影だけの業務委託契約のように、期間・回数・地域の制限なく利用・編集・再許諾できる形にするなら、その範囲を発注の時点で明示し、報酬との関係を説明できるようにしておくことが前提です。
受注者にとっては、成果物を実績として紹介できるかも大切です。先のスポーツ教室の基本契約(受注者側)では、発注者が公開した成果物は、受注者が自己のウェブサイト・SNS・営業資料・ポートフォリオなどに実績として無償で掲載できるとし、未公開の成果物は発注者の事前の承諾を得た場合に限ることにしました。ただし、納品後6か月を過ぎても発注者が公開しないときは、事前に通知したうえで、実績の紹介の目的に限って限定公開できる、という項を置いています。
委託する側の書き方は逆向きになります。映像制作会社の契約(委託者側)は、事前の承諾なく案件名・クライアント名・出演者名・成果物・制作途中の画面などを掲載・公開してはならず、成果物が一般に公開された後も同様とする、という強い条を置いていました。レビューでは、媒体を具体的に挙げ、公開後も対象にしている点を実務を理解した書き方と評価しつつ、期間の定めがなく事実上の永久禁止になっているため、力のある外注先ほど敬遠しかねないとして、「一般に公開された後は、甲の書面による承諾を得て、承諾された範囲で掲載できる。甲は、合理的な理由なく承諾を拒まない」という設計を勧めました。クライアントとの契約で実績の公開が禁じられている案件では、承諾しない合理的な理由があることになります。
ヒヤリングで確かめること 権利と実績の扱いを決めるとき
聞くこと
聞く理由
成果物の権利は、譲渡しますか、利用の許諾にとどめますか。
譲渡でも許諾でも、範囲を発注の時点で明示し、報酬との関係を説明できるようにします。
移転の時期は、支払の完了時ですか、納品時ですか。
支払完了時なら、移転前の利用の範囲と、クライアントへ権利を渡す場面との整合を確かめます。
受注者は、成果物を実績として紹介したいですか。
公開後は自由か、承諾制か、未公開のまま一定期間が過ぎたときの扱いを決めます。
クライアントとの契約で、実績の公開が制限されている案件はありますか。
外注先の実績の掲載を承諾しない理由になるので、案件ごとに伝えられるようにします。
既存素材と、写真・映像の権利を誰に残すか
サービス提供会社を通じて顧客の映像制作を受ける個人の契約では、受注者が業務の前から持っている著作物、汎用のテンプレート、映像素材、プログラム、スクリプト、フォント、効果音(既存著作物)は受注者に帰属し続け、発注者と顧客は非独占的で譲渡できない使用権を無償で取得し、修正・再配布・二次利用には受注者の書面による承諾が必要、と定めました。三者構造なので、顧客から個別の書面を求められる場面に備え、受注者は必要に応じて著作権譲渡契約書又はライセンス契約書の締結に応じる、という協力の条も置いています。
既存の素材の許諾は、条件まで書いておきます。映像制作会社の契約(委託者側)のレビューでは、移転前の成果物の利用の許諾には「無償で」とあるのに、成果物に組み込まれた外注先の既存の知的財産(テンプレート、プラグイン、自作の素材、モーショングラフィックスのプリセットなど)の利用の許諾には対価の文言がなく、期間・地域・撤回の可否・再許諾の可否も書かれていない点を指摘しました。後から「あの素材の利用料を払ってほしい」「許諾を撤回する」と言われないよう、無償であること、期間の定めがないこと、地域の限定がないこと、再許諾ができること、撤回できないことを明記するよう勧めています。
公的団体が発注者となる映像制作の契約(受注者が提示する版)では、企画・撮影・編集の成果物の著作権を、甲乙が協議のうえ共同著作者として共有し、登録・利用許諾・改変・翻案には相手方の書面の同意が必要としつつ、双方とも自社の広報・営業資料・実績紹介など合理的な範囲では事前の承諾なく利用できる、という形にしました。共有にする場合は、自分の実績紹介に使えるかどうかを必ず書いておきます。
権利の残し方の比較(事務所の書類から)
| 形 | 内容 | 向いている場面 |
|---|---|---|
| 支払完了時に移転 | 全額の支払で発注者へ移転。移転前は目的の範囲で利用許諾、未払いなら停止 | 動画編集の受注、SNS動画の制作 |
| 撮影者に留保+利用許諾 | 写真の著作権は撮影者。使用主体・目的・地域・期間を特定して許諾 | フォトグラファーへの再委託がある撮影 |
| 共有+相互の広報利用 | 共同著作者として共有。互いに実績紹介は事前承諾なく可 | 公的団体など、共同で企画する映像 |
学校・保育園・幼稚園の行事を撮影して保護者に販売する撮影事業者の契約では、撮影事業者が撮影・編集・複製した物の著作権(27条・28条を含む)は撮影事業者に帰属し、学校・園が素材として提供した写真・動画は販売目的の範囲で撮影事業者に譲渡して人格権を行使しない、学校・園がホームページや広報誌に使うときは協議、購入した保護者は私的な利用・複製以外をしてはならず、学校・園はその旨を通知する、という三者の関係を定めました。消費者向けの撮影の権利の書き方は撮影サービスの利用規約のページで扱います。
動画の著作権で起きがちなこと
よくあるご質問
動画編集者が作った動画の著作権は誰のものですか?
契約がなければ、創作した人に生じるのが原則です。ただし動画は映画の著作物に当たり得るため、著作者が映画製作者に製作への参加を約束していれば、著作権は映画製作者に帰属するという特別なルールがあります(著作権法29条1項)。契約で帰属と移転の時期をはっきり書いておくことが大切です。
報酬が支払われる前に動画を公開されるのを止められますか?
「報酬の全額の支払が完了した時に著作権が移転する」「移転前は目的の範囲で利用を許諾するが、支払が遅れたときは利用の停止を求められる」と書いておくと、未払いのときの交渉の材料になります。帰属の評価が揺れる場合に備え、契約上の停止請求権として書いておく方法もあります。
編集の一部を外注した場合でも、発注者に著作権を渡せますか?
外注先から著作権(27条・28条の権利を含む)を譲り受け、発注者・自分・発注者が指定する者に人格権を行使しない約束を外注先から取っておく必要があります。これがないと、発注者に約束した移転を果たせません。
自分のテンプレートやプリセットも、著作権の譲渡の対象になりますか?
受注者が以前から持っているものは受注者に残し、成果物に組み込まれた分は成果物を使うのに必要な範囲で利用を許諾する形が一般的です。許諾が無償か、期間・地域・撤回の可否・再許諾の可否まで書いておかないと、後で争いになります。
納品した動画を、自分の実績として公開してもいいですか?
契約の定めしだいです。受注者側の契約では、発注者が公開した後は実績として掲載でき、未公開のものは発注者の承諾を要する、と定める例があります。委託者側の契約で承諾制にするときは、合理的な理由なく承諾を拒まない、と書いておくと外注先にも予測がつきます。
あわせて読みたい、関連する別のガイド
- 著作権の譲渡契約書と、著作者人格権の不行使Web制作・デザインの契約書ガイド
- SNS運用代行で作った投稿物の著作権は誰のものかSNS運用代行の契約ガイド
あわせて読みたいページ
本ページは一般的な情報提供です。事務所の改訂例・ご質問と回答として紹介している内容は、アトラス行政書士法人が作成・レビューしてきた動画編集・映像制作の業務委託契約書、撮影の業務委託契約書、出演者の業務仕様書と本人同意書、撮影現場の秘密保持誓約書、撮影サービスの利用規約・キャンセルポリシー・重要事項説明書、収益分配型の業務提携契約などを、個別の事業者が特定できない形に整理したものです。条文は e-Gov法令検索で確認しています(最終確認日:2026年10月15日)。フリーランス法の運用は、公正取引委員会・厚生労働省のQ&A(令和8年8月26日時点)によります。参考: e-Gov法令検索 / フリーランス法Q&A(公正取引委員会) / フリーランス法特設サイト(公正取引委員会) / 特定商取引法ガイド(消費者庁)